トヨタ自動車労働組合が創立80周年を迎えられましたことを、心からお祝い申し上げます。
1946年、戦後の混乱の中で労働組合が結成されて以来、今日に至るまで、会社と組合は、お客様の笑顔と国や社会への貢献に向け、相互信頼と相互責任を基盤に、ともに苦労を重ね、努力を続けてまいりました。
労働組合の皆さんの、これまでのご努力とご貢献に、心から感謝申し上げます。
本当にありがとうございます。
トヨタの労使関係の歴史を振り返ると、1950年の労働争議と1962年の労使宣言に行きつきます。
労使宣言には、こう明記されております。
「自動車産業の興隆を通じて、国民経済の発展に寄与する」「わが国の基幹産業としての自動車産業の使命の重大さと、国民経済に占める地位を認識し、労使相協力してこの目的のため最善の努力をする。とくに企業の公共性を自覚し、社会・産業・大衆のために奉仕するという精神に徹する。」
これこそが、「トヨタの使命」であり、「トヨタらしさ」そのものであると私は考えております。
当時、トヨタの労働組合は、社内外から「どうしてあのような宣言を結んだのか」と厳しく批判されたと聞いております。
「春闘」という言葉が生まれ、「組合は団結して会社と闘う」のが当たり前の時代に、トヨタ自動車労働組合として、労使宣言を結ぶということは、とても大きな決断であったことと思います。
1950年の労働争議を踏まえ、二度とあのような経験を繰り返してはならない。
先人たちは強い決意、覚悟、勇気をもって、「労使宣言」という形で、次世代の私たちに「トヨタの使命」を託したのだと思います。
2022年3月、私が社長として出席した最後の労使協議の場で、こう申し上げました。
「自動車産業 550 万人の仲間のうち、組合があるのは3割に過ぎません。
残りの 7 割の人たちは、自分で声をあげて、要求をぶつける仕組みすらないのが現実です。
だからこそ、声を出せない仲間の存在を念頭に置き、日本で働くすべての人たちのことまで考えて話し合うこと。
そして、行動していくこと。
それが『すべての働く仲間に良い風を吹かせる』ことにもつながると思います。
労使宣言に謳われている『自動車産業の興隆を通じて、国民経済の発展に寄与する』。
この気概をもって、550 万人の仲間とともに、一歩一歩、歩みを進めてまいりたいと思います。」
この気持ちは、今もまったく変わっておりません。むしろ、強くなっております。
「Japan as No.1」と言われた時代が過ぎ去り、「失われた30年」という言葉が定着する中で、私には、今の日本が少し元気や活力を失っている、世界の中で、その存在感をなくしてしまっているように感じられます。
しかしながら、日本には、まさに「石にかじりついて」守り抜いてきた「モノづくりの現場」と、大切に受け継ぎ、磨き上げてきた「モノづくりの技能」があります。
今こそトヨタ労使が心を一つにして、「社会・産業・大衆のために奉仕する」という使命を果たす時だと私は思っております。
トヨタ労使が、自動車産業550万人の事実と向き合いながら、正直な話し合いを継続し、トヨタで働く一人ひとりが、社会・産業・大衆のために、自分以外の誰かのために、具体的な行動へつなげていくこと、それこそが、日本の元気と活力を取り戻すことにつながっていくと思います。
ともに頑張りましょう。
最後になりますが、トヨタ自動車労働組合の今後ますますのご発展と、組合員のみなさんの安全と心身の健康を心より祈念申し上げ、私のお祝いの言葉とさせていただきます。
トヨタで働く一人ひとりが、社会・産業・大衆のために、自分以外の誰かのために、具体的な行動へつなげていくこと
トヨタ自動車株式会社 代表取締役会長
豊田 章男